不思議なことに、こうした激しい病歴からは考えられないくらい、内科病棟での彼女は「いい患者さん」だったのです。また何かやらかすのでは、という私たちの警戒が取り越し苦労になったかのように、明るく私たちに話しかけ、テレビや雑誌の話をするばかりか、同室のお年寄りのお世話まで進んでします。「ごめんなさい、おせっかいして。ちょっとご飯を食べさせてあげちゃったの」当時は、手のかかる患者さんが多かったため、食事介助は順番に回っていました。そしてようやく彼女の部屋にたどり着いてみると、すでに、患者さんが食事介助をしてくれていたというわけです。この頃には、彼女も具合が良くなり、ひまを持て余すようになっていました。本来ならば患者さん同士での介助は良くないことですが、あまりに彼女がうれしそうにしていたので、私たちも多少のことは目をつぶっていたのです。