国の医療費を減らすものは、それが個人にとっての危険率をたいして減少させないとしても重要だ。どちらを強調するかの切り換えは、ほとんど潜在意識下で起こった。リポーター達は切り換えについてはっきり意見を述べることはめったにない。彼らは切り換えにいつも自覚的というわけではないのかもしれない。彼らは健康を脅かす危険が個人の場合でも意味をもつかのように報道しつづける。そしてもちろん人々は、危険がないならばニュースにはならないだろうと思う。しかし、はっきりと確定した危険因子でさえ、個人にとってはほとんど重要でないかもしれない。例えば、心臓血管系の病気で10年以内に死亡する危険率は、高コレステロール値の中年男性は4.9%だが、低コレステロールの人は1.7%だ。危険率の約3%の違いは、それ以外は健康な男性がコレステロール値を下げる努力をする気にさせるほど大きくはないだろう。それでも、多くのアメリカ人は、高コレステロールは死の宣告で、低コレステロールは長命の保証と信じるように仕向けられている。次々報道される研究がしばしば矛盾しているのは見かけだけのこともある。強い危険因子と弱い因子を区別する問題、堅実な研究とセンセーショナルな研究を区別する問題、国民の健康にとって重要なニュースと個人にとってのそれを区別する問題をこれまで述べてきたが、エレン・グッドマンの嘆きは、それとは少し異なる。次々に報道される研究がくい違い、しばしば矛盾していると彼女は言った。彼女の不満をもっと詳細に見てみよう。例を挙げよう。なるほど、閉経後のエストロゲンは乳癌と関連があると、ある研究で示すかと思えば、次の研究ではそうではないと示すかもしれない。そういう矛盾は医学研究ではよくあることだ。疫学的研究においてはその実施のむずかしさから、殊によく見られる。
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