中高年のある女性がたった「食事が済んだ」という単語を知っていただけで無事に会計を済ませ、レストランを出ることができました。確かに、彼女には勇気もありましたが、知っている単語をうまく自分の中から引き出しているということも感心すべき点です。単語をたくさん覚えておけば、それだけコミュニケーションはスムーズですが、その足りない部分を知識と工夫でクリアするのが大人の英語表現だと私は思います。では、どのように工夫すればいいのか、具体的な例を出して説明していきましょう。その例として、私がまだ少女だった時代、終戦直後のことだったのですが、私たち家族が住んでいた家が進駐軍によって接収された日の出来事をお話ししましょう。私の父は電力関係の事業をしていたので、日本が満州を開発した昭和の初期から海外へ出かけ、外国人と接する機会も多かったので、英語での会話には不自由はしませんでした。ですから、進駐軍が何の知らせもなしに、いきなり我が家に入ってきて、家財道具もすべて置いて出ていくようにと言い渡されたときも、父は懸命に英語で交渉をしました。必要最低限の家財道具と、家の敷地内に小屋のような家を建てることは認められ、悔しさはあるものの、当時16才の私にとっては英語を学ぶよいチャンスになりました。ある日、米軍の将校の1人が、庭の枯れ木を指差して「なぜ、枯れているのか」と言いました。それまで、英語で交渉をしていた父も何と答えていいかわからず、一瞬言葉を失いました。「植物の手入れ」という日本語から、それに当たる英語が思いつかなかったのでしょう。父も何らかの言い方を見つけ、口を開きかけると、別の人の口から別の表現で答えが飛び出しました。「水が欲しいのよ」と。そう答えたのは、進駐軍のメイドをしているまだ年の若い日本人の女性でした。英文法をきちんと学んだ様子はなかったのですが、片言の英語を使って十分米兵とコミュニケーションしていました。答えを聞いた将校は、「ああ、なるほど」と納得した様子でした。あまりにシンプルなので、父も私も呆気にとられてしまいましたが、私は、こんなにシンプルな表現でも通じるものなのだと思いました。その後、私は英語を本格的に勉強し始めるのですが、この経験があったからこそ、何の先入観も持たずに済み、英語を必要以上に難しく感じなかったのかもしれません。私たちがこれから習得しようとしている英語は、受験用の点数を稼ぐための英語ではなく、コミュニケーションの道具なのですから、どのような表現を用いても不正解などないのです。ただ、相手を納得させるだけのこと。場合によっては、よりシンプルな表現のほうが説得力を増すことだってあるのです。試しに、言いたいことの内容を頭の中でかみ砕き、知っている英単語で堂々と表現してみてください。あなたの周りの英会話が得意な人が呆気にとられるほど、理解しやすく説得力のある英語があなたの口から飛び出すかもしれません。そのためには、決まった通りに発言したり、行動したりするのではなく、柔軟に動く頭が必要です。とっさに処理しなければならない通訳の訓練は頭の回転を速くしたり、よくしたりするのに役立つでしょう。
[参考]
100円オンライン英会話のぐんぐん英会話
http://www.gge.co.jp/