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血のしたたるような肉が好きだった

外で食べる洋食から、家で料理する和食に変え、食事の質は向上したものの、外食をしない分だけ自宅社交をするので、食事の量はちっとも減りません。おまけに、料理に凝りだした私は、プロの料理人をわが家によんで料理教室まで始めてしまったのです。つくづく食べることが好きなのだと思います。しかも、仕事でひんぱんにヨーロッパにでかけるようになったので、ワインも欠かしません。いくら家庭料理を食べても、こんな状態では意味がないとは知りつつ、おいしいものの誘惑には勝てませんでした。思えば、あのころの私の生活は、ひとに会うこととパーティと旅行に明け暮れていました。競争のはげしいニューヨーク美術界での、ストレスのきつい、ハイピッチな生活を、じつはどこかで楽しんでいたようです。性急な性格には、多忙がアイデンティティだし、ハイスピードがよく似合うのです。もうひとつ、そんなライフスタイルには、肉食があいます。それも血のしたたるような生肉が一番です。じっさいに、私が好んで食べたのは、行きつけのレストランが得意とするタルタル・ステーキでした。血の色も鮮やかな鮮度のいい牛の生肉に玉ねぎと生卵をかきいれて食べるのですが、一人前を平らげるころには、文字どおり血沸き肉躍り、もうじっとしてはいられません。